世界を代表するアーティストやプロデューサーとしてだけでなく、人として尊敬を集めた坂本龍一氏。
私も才能だけでなく思想を含め尊敬しておりますが、彼は服装や身だしなみに関しても自身の哲学を持っていました。
先日、たまたま坂本龍一氏の特集を見たこともあり、少し彼の服に対する考えを書いてみようと思います。
坂本龍一を思い浮かべたとき、強烈な色や奇抜な装いを思い出す人は少ないと思います。
シンプルですがクールで洗練されている感じ。
彼の服装はいつも静かで、控えめで、どこか背景に溶け込んでいました。
見た瞬間に「なんて、かっこいいのだろう」と雰囲気から入り込んできます。
◎彼は“ファッション”という言葉をほとんど使わなかった
坂本龍一が語っていたのは、服の流行ではなく、
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空間との調和
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身体と音の関係
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情報量のコントロール
でした。
彼はインタビューで、趣旨としてこんなことを言っています。
余計な情報が多いと、音も濁る
服も同じで、主張しすぎるとノイズになる
服=空間の一部という感覚です。
◎重さがあると思考が安定する
坂本龍一氏は必ずしもビスポークを選んでいたわけではありませんが、シルエットや動いた時の布の挙動、そして重さを非常によく気にしていました。
特に有名なのが、
軽すぎる服は落ち着かない
重さがあると、思考が安定する
という趣旨の発言。
これは良いスーツの「布の重みが人を静かにする」というテーラーの感覚とかなり近いです。
◎ 「主張しない=存在感が消える」ではない
坂本龍一の服は目立ちませんが、彼の佇まいは強烈です。
理由は簡単で、服が身体を邪魔をせず長く着られる形だけを選んでいるから。
服が人格の邪魔をしないこれを徹底していました。
これは私たちテーラーの中でも同じ感覚を持つ人が多く、最高の普通を探す旅の考えに近いと思います。
◎環境意識
晩年の坂本龍一は、環境問題にも深く関わりました。
その影響で、流行消費への距離、長く使えるものへの意識がとても明確でした。
ファストファッションを使い捨てのように買う人と上質なものをケアしながら大切に着る人は根本にある意識が全く違います。
つまり人生・生活のすべてに影響してきます。
その人の着こなしを見れば大体どのような人かが分かる。これは紛れもない事実です。
坂本龍一の服装は、写真を見ても極端に地味です。
グレーや黒、ネイビーが極端に多い。
シルエットも細すぎず太すぎずゆとりも適度でありデザインもシンプル。
しかし、その佇まいは非常にエレガントで品があります。
その雰囲気こそ彼の思想そのものでしょう。
坂本龍一の服は、誰かに見せるためのものではなかったと思います。
ただ、自分がどう在りたいか、どう生きたいかを静かに支えるためのものでした。
装いで思想が伝わる。
その在り方は、音楽でも、服でも、そして人生そのものでも一貫していたように思います。
私たちテーラーの仕事も、実はとても似ています。
坂本龍一の装いが今もなお美しく見えるのは、それが流行ではなく、思想から生まれていたからでしょう。
そしてそれは、時代が変わっても色褪せない「本質」なのだと思います。
地味に着ろと言っているわけではありません。
自分の思想を表現した、また自分がなりたい人物になれるような服を選びたいということ。
内面が外見に表れ、外見は内面に影響を与えます。
安いから着る、めんどくさいからこれでいい。そう思うならそれ自体否定はしませんが知らずに損をしているかもしれませんよ。
良くも悪くも必ず人生に影響を与えているはずですから。