ナポリもフィレンツェも千差万別

最近は日本でもイタリアの仕立て方が増え定着しつつあります。

何十年も昔は英国、そしてアメリカが人気でしたが今はほとんどイタリア系が占めているような気がします。

当店もナポリのトップサルトで修業を積んだ職人が工房を仕切っていて個人的にも好きな南イタリア仕立てをハウススタイルにしています。

しかし、雑誌などで展開されている「〇〇(地域)のスーツはこう。」というのはちょっと違うところがあります。

以前南イタリアの仕立てについて少し書きましたが、最近似たような話が出たので少しおさらいを。

日本で特に有名なナポリのスーツ特徴はハンドの技法でいせ込みを多く取るマニカカミーチャ(現地ではマニカマッピーナと呼ばれています)の袖付けではないでしょうか。

確かにナポリで多い技法ですが、でも実際はパットを入れているサルトも当然ありますし構築的なシルエットのサルトも普通にあります。

最近では肩のシワもハンガーにかけると多少表れても袖を通すと収まるというかシワが消え、きれいなドロップショルダーになり流線的なシルエットに見えるところの方が多い気もします。

パッチポケットも多いですが年代によって違いますし普通のフラップも多くどれも正解です。

当たり前ですがサルトよってハウススタイルは違い、仕立て方もディティールもシルエットもそれぞれのサルトの特徴があるものです。

 

 

そして最近上がった話題で「フィレンツェ仕立てはフロントダーツがない。」というお話。

あと「脇身頃を省き、前見頃と後ろ身頃のみで仕立てられた二面体構成」というところ。

確かにフィレンツェにある有名なサルトがハウススタイルとして取り入れていますし他のサルトでも見かけますが、フィレンツェすべてのサルトがこのようなスタイルを持っているわけではありません。

どちらかというと日本でもその仕立てに憧れているサルトが真似している感じでしょうか。

このスタイルで称賛されているところは、脇身頃やダーツを省くとトラッドのようなボックスシルエットになってしまうところをアイロンワークによるクセ取りでウエストにかけての立体感を出すというもの。

その技法によってアメトラのような筒型ではなく立体的で柔らかなシルエットを再現できるというわけです。

 

話が少しそれますが、上でいうフィレンツェ仕立ての場合アイロンワークでは生地を伸ばしたり曲げたりはできますが極端に凹ませる(くびれを出す)ということはできないということを理解しなければいけません。

脇身頃とダーツがないスーツを見ていただくと分かりますが、シュっとしたくびれを強調するスタイリッシュなラインは出ていません。

トルソーにかかっているジャケットを見れば、前見頃にシワが入っているのが分かりますし、お腹が出ている人は似合うかもしれませんが細身の人はまぁ似合わないと思います。

実際に日本人の人がフィレンツェ仕立てだとネットにアップしている写真を見ても似合っていると思える写真がほぼほぼありません※細身の方が多いのと、前ボタンを開けて着こなしている方はいらっしゃいますがしめるとナチュラルさが見えないです

決して否定しているわけではなく、トラッドのようなゆったりシルエットが好きならいいですし、パーツが減ればスッキリ見えますし、私も日本の職人が仕立てるスーツで特に好きなひとつがフィレンツェ仕立てサルトのものです。

ただ流行にのまれ大金を出しても似合わない(似合っていない)可能性があることも知ったうえで仕立てることが重要です。

 

 

 

ナポリもフィレンツェもどこでも、大まかな仕立て方の主流はあっても「こうでなきゃいけない」ということはないと思います。

どのサルトも千差万別。

私が一番尊敬しているサルトは自由度が高いです。

結局かっこよく似合っていることが重要だと思います。

 

 

 

 

30年後もクールなジャケット

著・橘玲氏の「バカと無知」という本が面白かったです。

図書館で借りたのですが、面白くて返却してから再度借りて読みました。

若干過激なタイトルですが大雑把に説明するとバカは自分がバカなことに気づいていないという話がありました。

哲学者ソクラテスの「無知の知」と同じようなことですね。

面白いのはバカの人ほど自分を過大評価して様々な結果が出てもそれに気づかない。

逆に頭のいい人ははじめ「これくらいはみんなできるだろう」と過小評価することが多い。

バカと頭のいい人が話すとバカに引き寄せられることがあり全体の成績が落ちてしまうこともあるようです。

気をつけないといけないのは自分も普通だと思っていても実はバカで気づいていないだけかもしれないということ(笑)

謙虚に精進していかないといけませんね。

 

 

 

 

 

お客様のジャケットが仕上がりました。

VITALE BARBERIS CANONICOのWOOLLEN SUITINGS。

パッと見VBCの定番フランネルに見えますが目付もありしっかり織られていて質感も高級感溢れる生地。

美しい曲線で非常に仕立て映えします。

そしてグレンチェックが絶妙です。

格子の大きさ、色、起毛感の表情、どれをとってもバランスがいい。

クラシカルでシンプルで特別特徴的なところがあるわけでもありませんが、だからこそ使いやすくどのような着こなしにも合わせやすいです。

着こなしの上級者こそ1着は持っている、30年経っても着こなすことができるマストジャケットだと思います。

 

納品がありご試着いただきました。

非常に決まってます。

シンプルにウールスラックスのジャケパンにチノパン、デニム、ツイード、フラノなんでも合いそうです。

ニットをインしてもかっこいいですね。

シワが入ったり馴染んでくると経年変化も楽しみなジャケットです。


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本場でも仕立て慣れしている人は10年20年30年と先まで着ることを考えて仕立てます。

おじいちゃんになってもかっこいいジャケット。

もちろん今着てもエレガントですよ。

今回のジャケットも30年後に向けて育てていきます。

体型変化には注意ですが(笑)

 

 

 

 

 

際立つオーセンティックなコート

気がつけばもう10月。

早いですね。

日中は30度超えとまだまだ暑いのですが、朝晩は過ごしやすい日が続いています。

寒暖差が大きいと体調を崩しやすいので健康管理には気をつけてください。

猛暑で秋の味覚も遅れが出ているらしいのですが、多分下がる時は一気に下がると思います。

温暖化とはいえなんだかんだ結局は真冬は厳しい寒さになるので。

最近はコートのお問い合わせも増えています。

コートを着始めるのは12月中旬以降なので仕立てる時期としては最適です。

 

人気はチェスターコート、ローデンコート、ステンカラーコートなど正統派のオーセンティックなコート。

非常に落ち着きがあり大人の雰囲気漂うコートです。

クラシカルで定番と呼べるコートですが、街を見渡すと逆にこのようなコートを着ている人が減ってきています。

ダウンやキルティングジャケットの軽くて気軽に着れるアウターが増えています。

しかし、だからこそ歴史のあるコートのそのエレガントさを見つめなおすことができ、周りを圧倒する存在感を放つのだと思います。


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コートはのその質がとても分かりやすいもの。

上質なものとそうでないものと2つに分けられます。

経験上レディメイドでも10万以上、カシミヤなら20万以上するモノを選びたい。

素材から溢れ出るものが違うので見ればすぐにわかってしまいますし一生物になりうるのでお得です。

コート地はしっかりしているものが多く耐久性がありシンプルなものがあればそれほどたくさん持たなくても大丈夫なので、妥協せず本当にいいものを手にするべきです。

大人であればフォーマルな場やかしこまった場に着ていくコートを持っておきたいところ。

一流のお店ではコートを預ける時に分かってしまいます。

クラシカルなコートは大人の身だしなみのひとつです。